ティムの弟たち
わーーー! なんか高そうな壺割っちゃった!?
ど、どうしよ……
192年4日。
今から約1刻前、王家の居室であたしは不注意でティムのお父さん(国王陛下)の壺を割ってしまった。
さっきまで一緒だったティムはというと、掃除道具を取りに行くと部屋を出て行ったきり戻ってくる気配はなく、あたしもすっかり途方に暮れている。
ティムってば何やってるんだろ?
ここを動くなって言われたし、できるところまであたし1人で片付けておこうかな……
――まさか自分の家で迷子?
そんなわけないと首を振り、ティムの帰りを待ちながら素手で破片を拾い集める。
ほんの1刻前までは褒められて大はしゃぎしていたのに、今は割れた壺を前に指先から流れる血を見て目も覚めてしまった。
はぁ……あたし、入国早々何やってるんだろ……
昔からいつもこう。あたしは褒められると舞い上がって、結局最後は失敗するの。
きっと今回は王様に叱られるだけじゃ済まない。
今の所持金は3000ビーちょっとだし、弁償しようにも足りないに決まっている。
それこそ一生働いても払えないくらい……
近衛騎兵 アンテルム・ブヴァール
部屋をノックする音と同時に、革靴のティムとは違う足音がした。
あっ、ティ……誰!?
失礼、私は騎士隊の者です。
先ほど王家の居室で大きな音がしたとうかがったので参りました
鎧を着た背の高いオールバックの男の人がずかずかと入ってくる。
腰に差した剣を見てあたしは慌てて姿勢を正し、緊張のあまり呼吸やまばたきすらも忘れてしまう。
同じ剣を扱う組織でもプルトのコークショルグは軽装だったし、エルネアの騎士がこんなに重装備なのはやっぱり魔物が出るから?
ご、ごめんなさい! あの、壺を割ってしまって……
大変だ、血が出ている! すぐに手当てをしなければ!
えっ、あの、あた……わたし、ティム様にここを動くなって言われてるんですけど……
あたし騎士隊に捕まっちゃった系!?
その騎士は割れた壺には一切目もくれず、軽々とあたしを抱きかかえる。
彼はあたしを抱えたままどう見てもお姫様抱っこの状態で玉座の間を全力疾走!
城の庭から兵舎に入り、牢屋に連れて行かれるのかと思えば医務室へ。
お、下ろしてください! 自分で歩けますから!
彼は全く聞く耳を持たない。
すれ違った人は二度見、三度見したりあたしの顔を見てヒソヒソ話したり、子供には指を差されてもう穴があったら入りたい。
口での抵抗も無駄に終わり、あたしをベッドに座らせたところで彼は消毒液と絆創膏を取り出した。
こんな傷、舐めたらすぐに治るし大丈夫ですって!
ダメだ! 傷口から菌が入れば化膿する恐れがある!
さあ、手を出しなさい
しみるのは嫌だけどこの人が聞きそうにないので大人しく消毒に応じることにした。
一見変な人に思えても手際はよく、近くで見るとなかなか顔も整って……やばっ、めちゃくちゃイケメンじゃない!?
む、顔が赤いな。
脈も大きく乱れている……やはり熱があるようだ
いえ、あたし元々平熱高いんで!
(何なのこの人……)
あ、レリアさん。よかった~……
何してるの?
た、助けてティム!
部屋で待ってたんだけど騎士隊の人に捕まっちゃって……
さっきからこの人めちゃくちゃなの!!
アンテルム君、ちょっとおいで。
ごにょごにょ
ティムはあたしが何を言っても聞かなかった頑固な騎士を笑顔のまま黙らせてしまう。
あのときはつい熱くなって王族やめちゃえなんてバカなこと言っちゃったけど、今だけはティムが王子様で良かったかも……
遅くなってごめんね。父さん、今手が離せないんだって
ティムがこんなにも遅れた原因はずばり、1人になった1刻の間に修羅場勃発。
部屋を出たところで待ち伏せしていた女の子に捕まったらしく、連れて行かれた遺跡の方でキノコを採っていたら別の女の子が木の裏から覗いていたとか。
それからちょっと面倒なことが起きて、よりによってそんなところをお母様に見られてしまって……誤解を解くのに一苦労って感じ。
……先ほどは本当にすまなかった。
私としたことがケガをした女性を見て取り乱してしまうとは……
もっと騎士としての自覚を持つべきだった
色々な意味で呆然としていたあたしたちはティムの言葉でまだ名乗っていなかったことを思い出し、お互いのプロフィールカードを交換する。
名前:アンテルム・ブヴァール
役職:近衛騎兵(第3子)
誕生日:184年18日
年齢:7歳
性格:信心深い
称号:剣士、優等生
天賦の才:グリニーの導き
ティムの弟ってことはアンテルム様も王子様!
先ほどはお騒がせしました!
レリアさん、そんなにかしこまらなくていい。
今はまだ王家に籍を置いているが、いずれは独立して城下に居を移そうと思っている。
私のことは兄さんと同じように接してくれると嬉しい
じゃあ、アンテルムって呼んでいい?
これからよろしくね!
1刻前、王家の居室で何があったのかをアンテルムにも話す。
あたしが壺を割ってしまったことや、すぐにでも国王陛下に謝らないといけないこと……そんなことを話しながら改めて反省し、涙が出そうなのをぐっとこらえた。
……非は僕にあるんだ。
部屋の中だったし、僕がレリアさんの技をもっと見たいって言ったから
だからティムは悪くないってば!
割ったのはあたしなんだし、陛下がいらっしゃったらすぐに謝らないと……
と言いつつも肝心の陛下が出かけていたらどうしようもない。
アンテルムの案で陛下が戻ってくるまでダンジョンで時間を潰すことにした。
グリニーの導き
それはフォレストブレイドか?
武器を新調したと聞いていたが、慎重な兄さんが両手剣を手にするとは意外だな
ティムってばずーっと迷ってたみたいだから、あたしが選んであげたの!
敵もいなくてヒマだし出口まで競争しない?
よーい……2人とも、ボーっとしてたら置いてっちゃうからね!
レリアさん、足元!
え? うわっ、なんか変な草伸びてきた!
わ~っ!
出口までは一本道、敵の姿も見えないからと走りだした結果植物が絡まってあたし1人が宙吊りに。
おかしなツルに全身をもてあそばれてくすぐったくて、何がとは言わないけど黒のタイツをはいていなかったら本当に危なかった。
ティムはすぐに駆けつけてくれたけど、アンテルムは呆れて物が言えないって顔をして剣を持ったままその場から動かない。
あちゃー……アンテルム君、完全に固まっちゃってる。
下ろしてあげるからちょっと待っててね
……コホン、ここは武術職を目指す者が集う本格的なダンジョンだと忠告したはずだ。
元気がいいのは大いに結構だが、慣れるまでは私より先に進むのはやめた方がいい
アンテルムのお説教が身にしみる。
それなりに戦闘には自信があったし、森の小道は簡単だったから正直完全に舐めていた。
もう2人の前で恥ずかしい目には遭いたくないから勝手な行動はやめて、大人しく後ろをついていくことにしよう。
すっごい切れ味! あたしもアンテルムと同じ剣ほし~い!
正騎士の剣か、もらえるのは騎士隊に入ってからだね。
……おっと、そのまま進むと危ないよ
ええ~! こんな狭い道通るの!?
道ですらないじゃん……
アンテルムが急に回り道をしたので話すのをやめて追いかける。
ティムが急にあたしの手を引いたのを不思議に思っていると、後から来たチームが罠にかかったらしく撤退しているのが見えた。
それよりもさ、罠だらけのダンジョンなのに涼しい顔して歩けるってすごいよね!
天才ってアンテルムみたいな人のことを言うんだな~!
あの子は家族の中でも特別。
ダンジョンではいつもグリニー様が導いてくれるんだって
グリニー様はグリフ様の双子の弟でワクト様のお父さんだっけ。
エルネアはプルトと国教が違うって聞いたからちょっと心配だったけど、世界にあるほとんどの神話に同じ神様が出てくるから、学校で習ったことを思い出せば大きな失敗はしないはず。
船の中でも「エルネアの王子様」の話しててさ、天才騎士と何だっけ……お騒がせ王子?
アンテルムのことは天才だって色んな人が言ってたよ!
アンテルムが足を止めて一瞬振り返る。
この先にまた罠があると教えてくれるのかと思えば、一瞬だけ悲しそうな顔をあたしに向けるとすぐに前を向いて歩きだした。
あれ? あたし何か変なこと言った?
僕の勝手なお願いだけど、あの子のことは「天才」とは言わないであげて
アンテルムはグリニー様を守護神に持ち、武術職らしくバランスの取れた高ステータスで本格的な剣と高度なスキルを持っている。
あの若さで騎士になるくらいだから国の将来を担うすごい人なのは誰が見ても明らかなのに、天才以外の何があるんだろう。
ごめん。あたし、悪気はなかったんだけど……
2年前の選抜トーナメントで色々あってね。
あのときのアンテルム君の落ち込みようは正直、見ていられなかったから……
一国の王子がエルネア杯優勝経験のある騎士隊の夫婦に弟子入りして選抜トーナメントで優勝、歴代最年少で騎士隊入りを果たす。
話だけ聞けば華々しい活躍だけど実際はそうではなくて、ティムの話を聞いてから浮かんだアンテルムの姿は勝つために泥の中であがいて這い上がったようなイメージだった。
僕はアンテルム君じゃないから完全に気持ちを理解できるわけじゃないけど、すごい人を褒めるのに「天才」の一言だけで済ませるのって、今までしてきた努力を否定することに繋がると思うんだ。
特にあの子は真面目すぎるところもあるから、自分そのものを否定されたように感じるんじゃないかな
世の中には天才と言われて喜ばない人もいることは初めて知った。
あたしなんか天才って言われたら絶対舞い上がっちゃうから……一度でいいから言われてみたいなぁ。
僕たちは怒ってるわけじゃないからね。
アンテルム君、褒められたり頼りにされるのは嬉しいみたいだから、
探索に誘ったり困ったことがあれば相談してみるとすごく喜ぶと思うよ
次はいよいよボスステージ!
それじゃあ僕はこれで
えっ、ウソでしょ!?
ステージ4を出たところでティムが帰ってしまい、森の奥でアンテルムとまさかの2人きりに!
ティムがいたから和やかな雰囲気だったのに、お互い話題に困っているのか沈黙が続く。
ボロボロなのに回復薬はほとんどないし、お腹も痛くなってきた……
アンテルムといると議長の前より緊張するのに、いいにおいに包まれて変な気分。
なんて、こんなことで弱音なんか吐いたらワクトの神々の元にいる父さんが悲しんじゃう。
エルネアの騎士にプルトの武人はこの程度だなんて思われるわけにはいかないから、歯を食いしばって前に進むしかない!
君は根性があるな。
初めてこの森に足を踏み入れた者は大抵引き返すのだが……
ありがと! あたし、気合いと根性は誰にも負けないから!
……兄さんと違って話下手ですまない。
家族以外の女性と話すのには慣れていないんだ。
もらい物なんだが、この香水も不快感を与えていないだろうか
冬を思い出す凛とした香りっていうのかな。
清潔感もあって若い男の人がつけるにはぴったりだと思うんだけど、さっき抱っこされたときにあたしにも香りが移っちゃったような……
いいにおいでモテモテ間違いなしだと思うよ!
そうだアンテルムってさ、彼女いるの?
ついでにティムのことも教えてもらいたいな~
それは……私を君のご両親に紹介したいということだろうか。
確かに私は君を強引に医務室まで連れ込み、おかしなことをした責任が……ぶつぶつ
恋人の有無なんてちょっとした世間話もアンテルムにかかるとここまで飛躍する。
ややこしくなりそうだからこの話はこれでおしまい。
ティムも結婚に関してはやたらとネガティブだし、真面目な王子様ほど考え方が極端で……これがカルチャーショックってやつ?
そもそもあたし両親いないしプルトはお墓もないからなぁ。
もうこの際だからはっきり言うことにした。
真面目すぎるアンテルムはここまで言わないとずっと勘違いしたままだろうから。
ごめん、今の忘れて! あたしが好きなのはティムなんだ!!
あー言っちゃった……
話しててもあんまり教えてくれなかったしさ、ティムってぶっちゃけどんな人なの?
兄さんのことは両親と同様に尊敬している。
温厚で思慮深く、家族や民からの信頼も厚く、弟も頼りにしているようだ。
……だが、恋人のことは私にもわかりかねる
とにかく、ティムはアンテルムから見ても優しくていいお兄ちゃんって感じ。
今わかっているのは年齢と家族構成、たくさんの女性に結婚を迫られていることと選抜トーナメントに出ているってことだけで、好みのタイプも私生活も全てにおいて謎。
恋人の存在(や婚約者?)については家族ですら知らされていないみたいだし、これ以上部外者が首を突っ込んじゃいけないような気がした。
では、私からもいいだろうか。
レリアさんは何故この国に来て騎士を目指している?
う~ん、なんとなく旅に出ようと思って?
ぶっちゃけ武術職は騎士隊しか募集してなかったからなんだけど、アンテルムの仕事ぶりを見てたら志願してよかったと思うよ!
アンテルムは王族なのにどうして騎士になったの?
子供の頃、将来は兄さんと弟のアンガスと3人で父上や姉上を支えようと約束したんだ。
私は騎士隊長、ゆくゆくは龍騎士や評議会議長を目指している。
君の国では議長は国家元首として扱われるそうだな
そうそう! プルトじゃ議長が王様の代わりかな?
でも国のトップだからってふんぞり返ってたら不信任決議でクビになっちゃうから!
アンテルムが故郷の話を振ってくれたから緊張もすっかり解けて、あたしのテンションも声のトーンもどんどん上がっていく。
今の気分は有頂天。鼻歌くらい歌ってもいいよね?
はしゃぐのは構わないが、頭上には気をつけたまえよ
うわっ、蜂の巣!
――その後は議会とワクト教の話をした。
途中アンテルムが好きなように戦っていいって言うから、ボスへのとどめにヘヴィブルーズをお見舞いしてやった。
ここならどれだけ暴れても怒られないもんね。
……ふぅ。シズニ教の神話にもグリニー様って出てくるんだね。
シズニ様とワクト様は兄弟神で、グリニー様は2人のお父さん!
ああ、シズニ教とワクト教はアレフ教が元になっている宗教だからな。
恥ずかしながら私はシズニ教について多くを学ぶ機会に恵まれなかったが、アンガスはそれを専門にしている。
興味があれば明日の朝にでも会いに行くといいだろう
って感じでアンテルムとは思った以上に楽しく話せて魔獣の森もクリア!
ここのボスは強い武器が入った宝箱を落とすみたいだけど、今回はしょぼいものしか拾えなかったなー……
その後もう一度城を訪れたけれども、陛下はいらっしゃらなかったので明日の朝に出直すことにした。
陛下って、ティムとアンテルムのお父様なんだよね? どんな方なんだろう……
青いビスクで優雅な朝食を
それでね……その子、僕に何て言ったと思う?
……あっ、アンガス君が帰ってきたみたい
192年5日。
麦の収穫日和であるこの日は、普段は聞き役に徹しているティムが珍しく会話の中心にいた。
話題は先日エルネアにやってきた女性移住者についてのようだが……
ただいまー。なんかこの部屋生臭くない?
母さん、春のビスクを作って待ってくれてたんだよ。
アンガス君が朝まで帰ってこないからメニューは変更だって
王家の末っ子、アンガス・ブヴァールの帰宅により会話は中断。
髪はパーマというよりも寝ぐせが残っており、ボタンはちぐはぐでベストの前も開けっ放しというあまりにもだらしない格好をしていたからだ。
けしからん! また朝帰りだと!?
まったく、お前というヤツは……
兄のアンテルムが激昂するのも無理はない。
それもそう、享楽的な性格らしくアンガスのシャツは片方がはみ出た状態で口紅の跡までついているのだから。
まあまあ2人とも、僕も昨日ちょっと失敗しちゃったから半分いただくよ
うげー……変なにおいするし舌も真っ青になるじゃん……
まだ少し肌寒さが残る春の朝、温かなスープや魚料理が食卓を彩る中、ティムとアンガスは鍋いっぱいの青いビスクをスープ皿に注いでいく。
……アンガス君、そんなに僕の話面白かった?
いや、王子に向かって王族やめろとかどんだけ田舎者っつーかおめでたい頭?
ゴムゴムした食感の青い甲殻類を喉の奥に押し込み、強烈なにおいを放つ真っ青なスープは鼻をつまんで一気飲み。
むせ返るアンガスの横でティムは表情を変えることなくビスクを平らげ、口直しにイム茶を口に含んだ。
アンガス、神殿にお前の忘れ物があるそうだ。
取りに行くついでに懺悔でもしてきたらどうだ
アンテルム君、移住者の子にシズニ教のことを教えてあげてって言いたいんだよ。
レリア・ランフランクさんっていってね、僕に家を出ることを勧めてくれたのもその子
また風呂で男の旅人にナンパされたんじゃねーの!?
レリアちゃんね、今から会ってくる!
女性旅人や移住者に目がないアンガスだが、件のレリア・ランフランクが入国したという知らせを聞いたその日に飛びつかなかったのには理由があった。
彼はちょうど3日の朝に職を解かれ、神殿にある奏士居室で父や神官に説教されていたそうだ。
王子(元奏士)アンガス・ブヴァール
――ここは生まれて初めて訪れるシズニ神殿。
さすが兄弟神、ワクト教徒の方もどうぞお参りくださいか~!
アトリウムにいる黒ずくめの人に聞いたらアンガス王子は神殿の中にいるって言われたけど、それっぽい人は見当たらない。
辺りを見渡してもあるのは神々や天使の像ばかりで、よそ見をしていたらあたしは何かにぶつかってしまった。
\ババーン/
あ、すみま……なんだ、よく見たら天使像じゃん……ってこの像動いてない!?
やあ、探したよ子イムちゃん
誰よあんた。天使のお知らせタイムはもう終わったでしょ
あたしの前に現れたのは神話から飛び出してきたかのような絶世の美少年。
天使さながらの淡い色の髪と色白の肌に、真っ白な服と光る羽と、目の前の美少年は部屋の中で太陽を背負って佇んでいるように見えた。
君、オレのことを本物の天使だと思ってくれたの?
いや~、これを着て神殿で遊ぼうと思ったらおやじにバレて家まで連れ戻されちまってさぁ……
あっそ。あたしはここでアンガスって王子を探してるの!
ただの人間に用はないから
ただの人間じゃないよ、オレがそのアンガス。
オレも王子だからさ、兄貴たちのときみたいに可愛いリアクションしてよ
ひゃわぁ!!
耳元で息を吹きかけられただけで腰が抜けて立っていられなかった。
こいつが話に出てきたアンガス!? こんなチャラいヤツにシズニ教のことを教えてもらうなんて冗談じゃない!
名前:アンガス・ブヴァール
役職:王子(第4子)
誕生日:186年16日
年齢:5歳
性格:享楽的な性格
称号:シズニが導く者
いつの間にか胸元に押し込まれていたプロフィールカードを見て、船の中で聞いたエルネアのもう1人の王子――お騒がせ王子の噂を思い出した。
享楽的なんてかっこつけちゃってるけど、あたしに言わせてみればただのろくでなし*1だから!
女好きなのが余計にタチが悪いしもう最悪!
(アンガスファンの皆様すみません)
ティムの専属コーチになりました!
神殿では噂の「お騒がせ王子」のせいでひどい目に遭って、あたしは命というよりも貞操の危機を感じて逃げてきた。
ここまで来ればもう大丈夫だろうと、木造橋付近の川辺で腰を下ろしていると……
ティム、無理に家を出ようとしなくてもいいんだぞ。
オレとしてはお前が家にいてくれた方が何かと楽なんだがな
父さん、最近白髪も目立ってきたし「変装服」は無理があるんじゃないかな。
母さんにまた叱られても知らないよ
いや、そういう意味じゃなくてな
結婚は僕なりのケジメなんだ。
僕にできる父さんたちへの恩返しはそれくらいしかない。
……なんて、プルトの子に話したら怒られちゃったけど
もしかしてティムの隣にいる白髪のおじさんが国王陛下? そうだよね頭に王冠乗せてるし。
陛下は騎士とは違った白い鎧と黒いマントをお召しになっていて、本当に王冠をかぶっていらっしゃったからちょっと感動しちゃった。
でもこの国って魔物もたくさんいるし、王様が普通に道を歩いても大丈夫なのかな……
「王子」のお前の目に「共和国」の娘はどのように映った?
あの子の性格もあるんだろうけど、考え方が自由というか言い方がストレートというか、ちょっとうらやましかった。
彼女のような人にもっと早く出会えたら……ううん、僕にもっと強さがあれば
1日の始まりはやっぱり朝の挨拶。
しっかり息を吸って、気分もスッキリするようにお腹から思い切り声を出そう!
おはよーございまーす!
新入りは新入りらしく元気いっぱいでいかないとね!
陛下にお会いできたことだし、この後は盛大に怒られるイベントが待っているんだろうけど……
しっ、失礼ですが国王陛下でいい、いらっしゃいましゅっ……いらっしゃいますか!?
(噛んじゃった……)
いかにも! 余はエルネアを統べる偉大な王、オスキツ・ブヴァールである!
……なんてな、それも大昔の話だ。
レリア・ランフランクよ、話は聞いたな
ティム……さまが、強くなりたいとおっしゃっていたことですか?
ああ、こいつをちょっとばかし鍛えてやってくれんか。
うちの壺を割るほど元気な娘が傍にいてくれればやる気も出るだろう
ひゃっ、壺!? やります!
わたしなどでよろしければティム様の夢を全力で応援させていただきます!!
良い返事だ。
というわけだティム、お前はこれからこの者とともに鍛錬に励め
壺のことを謝ると、安物だったからとオスキツ陛下は大声で笑い飛ばしてくださった。
陛下はティムそっくりの凛々しいお顔に、性格は国王らしく堂々としていて実に豪快。
繊細なティムとは言動が正反対で笑ってしまうほど。
ごめんね、父さんわがままだから。
僕はメイドさんになってお手伝いしてもらった方がよかったんだけどなー……
あたしがメイド!?
ムリムリ、家事とか壊滅的だし絶対また何か割っちゃう!
うーん、確かにレリアさんは体を動かす仕事の方が向いてるかもね……
あたし、レリア・ランフランク6歳(もうすぐ7歳)!
ただの家出少女だったけど、行き着いたエルネア王国で国王陛下よりティム王子の専属コーチを任されました!!
というわけでこれからあんたをビシバシ鍛えてあげるからね!
ちょっと、何よその顔~……
う、うーん……
【次回予告】
刻一刻と試合の日は迫り、独身女性達によるティムへの激しい求婚に焦り始めたPCレリア。
彼を守ろうと恋人役に立候補するものの、「王族と外国の人は付き合えない」と告げられ強い孤独感に苛まれる。
次の記事>>>第3話:王家の掟
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今までの話はここから読めるよ。
レリアちゃんってば、王子に向かって王族やめろって……ぷぷっ
次の話はこの下だよ!
王族と移住者との結婚、他の国じゃOKらしいのになんでエルネアはダメなの~!?