ねばぷれ

エルネア王国のプレイ日記と攻略ブログです。モニカ国・オスキツ国・海外版Kane国を中心にプレイしています。ワーネバシリーズはプルトなど過去作もプレイ中!

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海外版でも王子攻略!~Kane国でLedley王子と結婚してみた~

海外版Kane国にてIsaac王子攻略の合間に分岐データを作り、騎士隊長コースでLedley王子と結婚できるかを検証してみました。

※Kane国王族の寿命とそれ以上の重大なネタバレが予想されます。

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【Switch版】移住パスワード(海外版初期国民)

Switch版『エルネア王国』で取得したパスワードです。
現在自分用に発行した海外版初期国民のパスワードを置いております。

厳しいルールは設けておりませんが、利用規約に同意いただける方のみご利用ください。

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【オスキツ国】第4話 波乱のトーナメント幕開け【ティム王子攻略編】

波乱のトーナメント幕開け

惚れっぽい1日

192年7日。
ティムとケンカした(あたしが一方的に口を利かないだけ)まま試合当日を迎えた。
ティムってば朝っぱらからあたしに用があるみたいだったけど、こんな時間に来るならあたしはあいつにとってその程度の存在だったんだろう。
話してもどうせまたケンカしちゃうから、今日は同じ時刻に試合を控えたアンテルムに会いに行くことにした。

トレードマークのオールバックを見かけたので駆け寄ってお守りを渡そうとしたら……

アンテルムに(付き合いたい)

アンテルムが振り返った途端辺りが良い香りに包まれて、あたしの頭の中では花畑がふんわりと広がっていく。
医務室での出来事や魔獣の森で2人きりになったことを思い出して、ティムがダメなら弟のアンテルムとならどう……なんておかしな考えまで浮かんでくるほど、そのときのあたしは本当にどうかしていた。

レリアさん、私の顔に何かついているのか……?

おっ、お守り! 応援には行けないけどお互い頑張ろうねっ!!
じゃあ、バイバイ!

だから王族はダメだってば!!

ティムにフラれたショックで惚れっぽくなってしまったみたいで、あたしはアンテルムにお守りを押しつけるように渡してその場から逃げ去った。

続いて試合前に会場の下調べをしておこうと、地図を見ながら選抜トーナメントに使われる練兵場を再確認。
ほら、遅刻したら最悪だし。

ロニーから異性の紹介

あたしがティムにフラれた噂は国中に広まっているようで、心配した男友達が異性を紹介しにやってくる。

この人は新成人のロニー・ロレンテ。
ウィアラさんに言われて練習試合の相手を探しているときにたまたま近くを通りかかった彼を引っ張っ……運命的な出会いを果たした感じ?
本当はアンテルムにお願いしたかったけど、国民は王族や武術職とは試合できないから一般国民の練習仲間がほしかったわけ。

ちなみに彼には超美人の彼女*1がいるようであたしがつけ入る隙はない。
今は新しい出会いを求める気もしなくて、紹介された人にわざわざ会いに行こうとは思わなかった。

やっほーレリアちゃん、もしかして緊張してる?
そんな釣られたポポゴみたいな顔してちゃ、可愛い顔が台無しだよ

……はぁ

木造橋ではアンガスと出会った。
こいつも黙ってさえいれば世界中の女性を虜にする魔性の美少年。
試合当日なのに相変わらず遊びほうけているようで、こんなヤツと戦うあたしにまで怠け者が移りそう。
仕事のスピードに関しては真面目な人から見ればどっちもダメダメだろうけど、むじゃきはろくでなしよりマシだから!

……なんて、本気で騎士を目指すなら失恋くらいで落ち込んでなんかいられない。
気合いを入れ直すためにアンガスに宣戦布告してやった。

アンガスに宣戦布告

真面目な話はこの辺にしてさ……ドルム山でウォーミングアップでもしない?

試合前は探索はできないけど外で仕事をするくらいなら大丈夫。
橋の横で釣りを始めるティムの姿が見えたのもあって、ちょっと遠くへ行きたかったのもある。


アンガスに連れられ、険しい山を登って足腰を鍛えながら洞窟の中へ。
しばらくヒマだからミアラさんに頼まれた化石でも探そうかな。

レリアちゃん、初めてでしょ?
大丈夫。オレは初めての女の子には優しくするから

新成人のあんただって初参加のくせに、えらそーに何言ってんだか。
王子だろうと誰だろうとあたしは一切手加減しないから!

と、アンガスの挑発にツルハシを握る手にも力が入る。
ふと横の木箱を見ると、アンガスが足を組んでこちらをニヤニヤと眺めていた。

ちょっと、人をこんな所まで誘っておいて何サボってんのよ。
高みの見物のつもり?

オレは見る専門だから。
女の子が一生懸命採掘してるのって、いくら眺めても飽きないんだよね〜

あっそ。じゃあツルハシが頭に当たっても文句言わないでよ……あれ?

いつの間にかアンガスはいなくなったみたいで、あたしは洞窟の奥で置き去りにされてしまった。

ウソ、迷子?
もしかしてあたしを遅刻させる作戦だったの!? 絶対許さないんだから!!

そういうときこそ導きの蝶の出番だ。
薄暗い洞窟から執念でアンガスを追いかけて、練兵場に着いた頃には汗だくで疲労はMAX。
試合直前なのに水も飲めず、最悪なコンディションのまま本番を迎えることになってしまった。

波乱の幕開け

選抜初戦開始

死ぬ気で走って練兵場に滑り込んだ頃、会場の中心には既に審判が立っていて、客席にはアンテルムの姿もあった。
闘技場の試合はもう終わってしまったようで、時間はギリギリ夕1刻……待ちくたびれた観客(主に女性陣)の視線がひたすら痛い。

アンガスの入場

試合開始の合図が鳴り、左手のアンガスが入場。
どんな武器を持っているのかと思えば初心者用の弱っちい剣……? だったら楽勝じゃん!

192年7日はこのオレ、アンガス様の記念すべき初試合!
愛しの子イムちゃんたち、全力でオレを応援してくれるよね?

一方であたしの方はガラガラだった。
ティムもアンテルムも最前列の家族席にいて、アンガス側の客席には女の子がたくさん。
別にうらやましくなんてないし、応援なんてなくても勝てるってことを今から証明してやるから。

レリア・ランフランク、いきま……ふぎゃっ!
うえっ、口に入っちゃった……

アンガスを真似て剣を高く掲げ、前に進もうとした途端異変は起きた。
昨日雨が降っていたせいであたしはぬかるみに足を取られ、顔から思い切り泥に突っ込んでしまったんだ。

これはこれは、チョコレートの泉から可愛い妖精さんの登場だ

水たまりに映るあたしの姿は可憐な妖精というよりも森にいた泥の魔物。
アンガスの全くフォローになっていない言葉が観客の爆笑を誘い、どう見ても恥の上塗りでしかなかった。

というのはおいといて、エルネアでの公式戦はポイント制ではなく単純に相手の体力を減らして膝をつかせたら勝利らしく、技や作戦を考えたり難しい駆け引きなしの力比べが主流だ。

な~んだ、プルトの試合より簡単じゃん!
先手必勝! 秒でぶっ飛ばしてやるんだから!!

あたしは助走をつけて飛び上がり、アンガスの頭上から一気に剣を振り下ろした。
アンガスはというと、剣で攻撃を受け止めながら不敵な笑みを浮かべてこんなときでも余裕しゃくしゃく?

……やっぱりね、ティム兄の言ってた通りだ。
オレ、素直な子は好きだよ

ティムが何を言ったのか知らないけれど、温室育ちの細っこい王子なんてあたしの敵じゃないから!
アンガスは反撃するのかと思えば、

へぇ、腰も細くて可愛いじゃん。
試合じゃなかったら今すぐ抱き寄せて……おっと

相手の出方がわからない以上、剣を正面に構えたまま後方に飛び去ることで危険を回避。
確か武器屋には二刀流用のダガーもあったはず。
しょぼい剣はおとりで、もう1本武器を隠し持っていたっておかしくない。
腰に目をつけたということは回り込んでくる……?

ねえ、そろそろ降参してよ。
女の子にケガさせたくないからさ

何言ってんの!? この状況で逃げるとかありえないでしょ!
力比べだったら負けないから!!

どうせあたしは他の戦い方なんて知らないんだし、魔物とだって練習試合だって正面から真っ向に挑んで勝った!
あんたが動かないんだったらこのまま叩きのめしてやる!!

あーあ、どうなっても知らないよ

アンガスが剣を地面に突き立てると、どういうわけかあたしの剣は一瞬で粉々に砕けてしまい、手には黒い持ち手の部分だけが残った。
女の子たちの大歓声が上がり、アンガスはこちらに勝ち誇ったような表情を見せると審判と客席に投げキッス。

……ふぅ。
この子の武器が壊れちゃったからオレの勝ちね、審判のおねーさん

エルネアの試合は武器が壊れたら終わりなの!?
ふざけないでよ! 審判が女の人だからって色目まで使って……!

あたしは足元の泥を拾ってアンガスの顔に投げつけた。
使い物にならない剣を投げ捨て、拳を握って飛びかかると客席にどよめきが起こる。
プルトでは剣を弾かれたって素手や魔法で戦えるし、あたしは武器なんてない方が本領発揮できるから!

ちょっ、そんなのアリ!? なんか今顔に飛んできたよね!?

審判さん、あたしはまだ戦えます!
……ッ、プルトの武人の力、全国民に見せつけてやるんだから!!

拳が頬をかすめ、アンガスがひるんだ隙に水たまりめがけて投げ飛ばす。
起き上がろうとしたところで得意のヘヴィブルーズをお見舞いすると、ヤツは膝から崩れて泥の中へ。

――騎士隊が駆けつけ、アンガスは担架で医務室に運ばれていった。


夕2刻。
あたしは審判の指示で退場することになり、客席の女の子たちは阿鼻叫喚。
彼女たちが去った後は歓声も拍手もなく辺りはただ静寂……というよりも沈黙に包まれていた。

あたし、やっぱり負けちゃったのかな……

試合については想定外のことが多く騎士隊で審議中だ。
アンガスは君の武器が壊れるのを待っていたのだろう。
女性に甘い彼は君を傷つけることなく戦意喪失を計ろうとした……だが君の場合、それが裏目に出てしまったわけだな

事情を知っているアンテルムは慰めてくれたけれども、多くのエルネア国民にとってあたしの戦い方は受け入れがたいように思えた。
試合だったとはいえアンガスを思わぬ形でボコボコにしてしまったこともあって、あたしは何も返せなかった。

レリアよ、先ほどの試合を少しだけ見させてもらったぞ。
あれがティムに見せた最終奥義・ヘヴィなんたらだな

へ、陛下!
あたっ……わたしにとっては最終奥義というか、まだこれしか使えなくて……

アンガスにはオレもヴィクトリアも手を焼いていてな……あれであいつも少しは痛い目を見ただろう。
それよりもティムだ。昨晩からひどく落ち込んでいるようだが、何かあったのか?

はい……ティム様とケンカしてしまって……
後でアンガス様のお見舞いにもうかがわないと

陛下はあたしに花束を2つ持たせてくださった。
王家の温室で採れた花々は恋人に贈るものだけど、陛下がお望みなのは2人との関係の修復……考えると気が重い。

まあ何だ、試合の件は当事者同士で話し合った方がいいだろう。
ティムとの件は……男と女は色々あるからな

レリアさん、君の剣は修理に出しておこう。
この辺りで待っていてくれるか

……ねえアンテルム、武器が壊れたのってあたしの戦い方が悪かったからだよね。
あんな戦い方もうしないから……1から剣の使い方、学ばせて!

ああ、私にできることがあればいくらでも協力しよう。
それでは少し、失礼する

――アンテルムから借りた正騎士の剣は重く、練兵場通りのカカシで数回試し斬りをするだけでも息が上がる。
どうも持ち方からして違ったみたいで、切るというよりも叩きつけるように使っていれば短期間で壊れるのも無理はない。
試合前に武器を掲げるのは作戦立てや観客へのアピール以外にも審判が損傷をチェックする意味もあったらしく、入場した時点であたしの剣は少なからず刃こぼれを起こしていたという。

そうなる前にタナンの高炉で修理しておくべきだったんだけど、あたしはそれをしなかった。そもそも知らなかったんだ。
加えて時間もギリギリでこれ以上観客を待たせるわけにはいかず、武器の破損は(ルール上)自己責任ということで試合は始まった。
それで、あの場の誰もがあたしが負けると思っていたわけだけど……

さてと、濡らしたハンカチで顔を拭いて汗も泥も綺麗さっぱり!
空になった水筒は後で水源の滝に持って行こう。

……これで正しい剣の使い方は覚えたな。
私からのお願いだが、筋骨堂で武器を引き取ったら難易度2の各ダンジョンを最後まで探索してきてくれないか。
深い森の探索を終えたらまた私の元に来てくれ

アンテルムが言うには、難易度2のダンジョンをクリアした新規移住者には各武術組織から体験服のプレゼントがあるそうだ。
これを着れば各役職の仕事を体験できるだけでなく、あのゲーナの森にだって挑戦できる!
ティムがあたしに難易度2のダンジョンの踏破を勧めてくれたのはこのためだったのかもしれない。

だったらなおさら謝らないと!

アンガスのお見舞い

192年8日。
この日は入国以来ずっと気になっていた収穫祭……なんだけど、あたしはまず医務室に向かった。
約束通り、昨日ボコボコにしてしまったアンガスのお見舞いだ。

昨日はごめん、陛下から花束をいただいたんだ。
……あたしの顔、思い切りぶん殴っていいよ

オレが女の子を殴るとか冗談きつすぎでしょ。
でも一国の王子の顔をボコるとか下手すりゃ国際問題だよ?
キスしてくれたら許してあげるけど

や だ

花束を置いて帰るつもりがアンガスは食べ物にありつけないイムみたいな顔でこちらを見つめてくる。
湿布の上からでも顔の腫れのひどさがわかるほどで、顔の半分は笑っていてももう半分は動かす力がないように見えた。

……顔もだけどさ、体は大丈夫なの?
思い切り投げ飛ばしちゃったし、どこか折れてたりしない?

体はおやじが治してくれた。
でも顔は治す所ねーとか言い出してさ……それよりベッドが狭すぎて体中が痛いの。
今めちゃくちゃ凹んでるし、レリアちゃんがマッサージしてくれたら元気になるかも。
い・ろ・い・ろと

もっかい殴っていい?

アンガスは思った以上にピンピンしていた。
歩くのも問題ないようで、朝の間は神殿で豊穣の祈りを見学したり、筋骨堂で武器を引き取るついでに噴水広場の出店を一緒に見て回った。

国際問題とか冗談だからさ、晩メシでも付き合ってよ。
おやじから2回戦が始まるまでに話し合って勝敗決めとけって言われてんの

……陛下のご命令なら仕方ないか。

アンガスと仲良くなる

夕刻は酒場でごはんの約束をして、アンテルムに言われた通り昼からは難易度2のダンジョン(深い森、坑道の脇道、旧市街跡)を探索した。
魔獣の森で鍛えた分1人でもクリアはらくらくで、正直ちょっと物足りないかも。

王子の毒牙

―夕刻、酒場にて―

……何つーか気迫に負けたっつーかさ、レリアちゃんって素手の方が強くね?
普通試合中に武器がぶっ壊れたら降参するでしょ。
レリアちゃんってばボロボロの剣で突っ込んでくるからそれを狙ってたんだけど

プルトは体術が盛んなの。
エルネアのルールに従ったつもりだけど手が出ちゃったし、あたしの反則負けじゃない?

いや、オレの完敗だよ。
騎士隊とか言ってるけど武器に規定なんかねーし。
運良く拾った銃で来るヤツもゴロゴロいるよ

アンガスはメモ用紙に結果を書いて近くにいた使いの人に手渡した。
結果、昨日の試合はあたしの勝ちということで一件落着。

あんたさ、女好きのろくでなしだと思ってたけど意外といいヤツじゃない?

へぇ……ティム兄のこと、あれだけ好きだったのにオレに乗り換えるんだ?

アンテルムから聞いたの!?
言っとくけど、あたしが好きなのはあんたじゃなくてティムだから!!
……フラれちゃったけど

アンガスはあたしの顔を見ながらいつも以上にニヤニヤしているようで、ここでようやく口を滑らせてしまったことに気づく。
口の堅そうなアンテルムがあたしの秘密を簡単にバラすかなって……

はい、これが収穫祭限定のマトラ定食ね。
仕事の予算は収穫祭に回せって言ってるのに、議員がケチだからここんとこマトラ定食ばっかだよ。
おやじの出番は意見が割れたときしかねーし何のための議会なんだか

名物のマトラ定食は噂通りビミョーな味。
予算が下りればハーベストディナーというグレードアップした料理が出るらしいんだけど……今日のメインは限定料理よりもオマケの占いかも。

エレクの因子
フェルタの因子

ねえ、見て見てアンガス! あたし、騎士に向いてるんだって!

オレは人間関係と幸運に恵まれてるってさ。
まあそうだろうね……ってレリアちゃん、聞いてる?

このときあたしは完全にうわの空。
さっき階段を上っていった旅人の男の人がフードを外すと、長い黒髪が風に揺れて……誰かを思い出したわけじゃないけど、誰だって近くで動くものがあると気になるでしょ!

へぇ、レリアちゃんってやっぱそういう系がタイプなんだ。
知ってる? この国で黒髪を伸ばしてる大人の男は1人しかいないんだぜ。
おやじが国王の変装服着せて色々と面倒事を押しつけるからさ、皆で髪切っちまったって噂

うっ、後ろ姿が兄貴に似てたの!
血は繋がってないけど超がつくほどのシスコンだから、あたしのこと追っかけてきてもおかしくないでしょ?
ちょっとどんな顔してるか見てくる!

……その兄貴にティム兄が似てるんだ。
血の繋がらない兄貴とひとつ屋根の下でねぇ……
っと、今は行かない方がいいよ。ほら、女の部屋に入った

おかしな言い訳でまた自爆して、さっきの人は旅人同士で交際中。
何も見なかったことにして席に戻った。

悪い男には気をつけないとね。
今日は全部おやじのおごりだからさ、いっぱい飲んで嫌なことは全部忘れちゃおう

なんとなくムカムカしたからアンガスがついでくれた女神の火酒をグイッと飲んでみる。
ポムの火酒に蜂蜜を加えた収穫祭限定のお酒らしいんだけど、お酒を飲むのは今日が初めてでドキドキする。
夜遅くまで出歩いても怒られないし、お酒も飲めて、大人ってサイコーーー!!

いい飲みっぷりだね。さあ、どんどん飲んじゃって!
レリアちゃん甘いの好きでしょ、この際愚痴でもノロケでも何でも聞くよ

ふぁ~い、いたらきま~す!
あのね、ティムってばね……

なんかちょっと暑くなってきたかも。
アンガスにうながされるままコルセットとかばんを外して楽な格好になって、心も体も軽くなったから踊って疲れちゃって……楽しいからまあいっか!

ティムってば訓練中なのにあたしが目を離したら延々と女の子に連れ回されてるの!
断ればいいのにずっとだよ……それでね……ふにゃ

すっかり酔っぱらってステージの上でバランスを崩してしまったあたしはアンガスに抱きつくような形で倒れてしまった。
顔がやけに熱くて頭もくらくらで力も入らず、アンガスの助けを借りないとまともに立てないくらい……

レリアちゃんって面白いくらい酔っちゃうよね
……疲れたの? じゃあそこの客室で休憩しようか

享楽王子ことアンガスに目をつけられた女の子はお酒をたくさん飲まされて、酔い潰れた頃に客室に連れ込まれてしまうんだって。
後から聞いた話だけど、それがいつもの手口らしい……

次の記事>>>第5話に続く

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*1:自国では1歳上のカロリーナ・ルフェテさんと恋人になりました!

【オスキツ国】第3話 王家の掟【ティム王子攻略編】

王家の掟

ごめんねレリアさん、父さんのわがままに付き合わせちゃって。
僕たちは昼頃まで麦の収穫があるから、また夕刻に闘技場で

うん! じゃあ、また後で!

192年5日。
今日は騎士隊トーナメント開会式のことで頭がいっぱいで、朝から麦の収穫があることを完全に忘れていた。

この国の納税にあたるのがギート麦の納品。
あたしのような新規移住者は移住費用の5000ビーに含まれているから初年度は免除されるんだけど、25日に来年の分を植えに行くのだけは覚えておかないと。

というわけで朝の間は他の旅人や移住者と一緒に農場を見学して、昼からは市場までインテリアを見に行くことにした。
フラワーランドのエスティンさんに聞いてみてもお城にあるような壺はないらしく、お礼を言って大きないむぐるみを買って帰る。

これでウィアラさんのミッションもクリア!
……別にぬいぐるみがないと眠れないわけじゃないから!!

騎士隊トーナメント開会式

192年度選抜トーナメント表
192年度騎士隊トーナメント表

うわっ、あたしの試合アンテルムと丸々かぶってるじゃん!
見たかったのに~!

昼4刻、あたしは闘技場前のボードで2つのトーナメント表を見比べていた。
あたしとアンガスの試合が7日で、アンテルムの試合も同日同時刻。
応援には行けないとしてもせめてお守りは持たせてあげよう。

夕1刻、いよいよ騎士隊トーナメントの開会式が始まった!

騎士隊トーナメント開会式

オスキツ陛下は闘技場の奥にいらっしゃり、真っ赤な絨毯の上には専用の椅子まである。
お隣には神殿で見かけた黒ずくめの人がいて、王国の花形であるローゼル近衛騎士隊は総勢16名!
アンテルムはどこにいるんだろう?

レリアさん、こっちこっち! いい席取っておいたから。
飲み物はミックスジュースでいい?

ありがと! あたし、甘いの大好きなんだ~!

もぐ……レリアちゃんはオレと同じで甘~いジュースが好き、と。
オレからはクリスプポト、あーんしてあげる。
それとも口移しの方がいい?

どっちもお断りなんだけど!!

アンガスは名残惜しそうに最後の1つを口に放り込む。
すると、何も言わなくてもティムが空になったバケツを持って席を外した。
本当、いいお兄ちゃんというか今はただのパシり?

ねえ、上にいる司会の人って誰なの?
黒い服だし陛下の横にいるってことはもしかしてあの人が議長さん?

神官だよ。モテるけど中身はただのじいさんだから騙されないでね。
ちなみにオレ、こう見えて神官の資格持ってるんだよね~
……惚れ直した?

後半は聞かなかったことにしよう。
ということは昨日アンガスが神殿をうろうろしていたのはたぶん仕事の関係。
いまいち信じられないでいると、アンガスはいきなりシャツのボタンを胸元が見えるように外し始め、シズニ様を模したペンダントとなんか色々見せつけてきた!

このペンダントこそが国内でも数人しか称号を持たないらしい「シズニが導く者」の証。
その上位称号となる「真理を伝える者」を唯一持っているのが神官なんだけど、不真面目で女癖の悪いこいつがその後継者(候補)なのが不思議で仕方がなかった。

言っとくけどあたしが好きなのはあんたじゃなくてティ……
あわわわ! ティ、ティムってば戻ってきてたの!?

うん。レリアさんはそんなに慌ててどうしたの?

アンテルムには誤解を解くためはっきり言っちゃったけど、アンガスの前でうっかり口を滑らせるわけにはいかない。
そんなことより、開会式に集中しないと!

騎士隊トーナメント開会式2

アンテルムは最後列の端にいた。
昨年度の選抜決勝戦で戦った新入りの騎士隊員が並ぶのがそこで、たとえ王族でもスタートはまず平の近衛騎兵からなんだ。

騎士隊トーナメント開会式3

騎士隊長の合図で後ろにいる15人の騎士たちが剣を掲げ、客席からも歓声があがる。
アンテルムを含む多くの騎士は正騎士の剣、前列に多い隊長経験者はワンランク上のローゼルの剣、真ん中の男性騎士だけが他とは違う青い剣を持っている。

アンテルム君、かっこいいでしょ。
斜め前にいる勇者の剣を持った人があの子の先生でね、昔エルネア杯で優勝したことがあるんだって

ティムによればあの青い剣はエルネア杯で優勝した勇者の証。
ローゼルの剣よりもランクが高く、この国で剣の道を志す者なら誰もが憧れる逸品だ。

ちなみに今日の試合はいわゆる騎士隊長による「洗礼」だった。
ショルグと違って強さに応じてランク分けされるわけじゃないから、どうしても新入りの人が負けちゃうのかな。

んじゃオレはお邪魔だから退散っと。
今夜は誰と遊ぼっかな~

開会式が終わるとアンガスは(空気を読んで?)ふらふらとどこかに行ってしまう。
享楽的な男らしく夕刻からはナンパに励むみたい。

一方でアンテルムはお守りやモフ毛を持った女の子に囲まれていて、とてもじゃないけど話しかけられる状態じゃない。
時間も遅いし、今日はティムと2人でどこまで行けるか試してみよう。

ティム、あたしたちも行こっ!
今日こそは2人で魔獣の森をクリアするんだから!
こんな所で突っ立ってたらまた追っかけの子に捕まっちゃうよ~!

ま、待ってよ~

――それから1刻後、魔獣の森から出てきたあたしとティムは期待に反して満身創痍。
逃げるのに必死でせっかくの戦利品も全部置いてきてしまったし、この前は思った以上にアンテルムに頼っていたことを痛感した。

くやし~! あたしたちの力じゃこれが限界なの!?

今度は騎士隊の人に護衛をお願いしようか。
回復薬やトラップサーチの準備も忘れずにね

―エルネア城王家の居室―

ダダン液=プロテイン

ところでティム、それは何だ?

この前父さんがレリアさんとのトレーニングを勧めてくれたでしょ?
アンテルム君がダダン液を分けてくれてね

面白いものに遭遇?

あの子、朝から晩まで僕につきっきりだからヘトヘトだよ

移住者の女の子と秘密の特訓でヘトヘトねぇ……
これは面白いことになりそう

※ダダン液=プロテイン的な

ティムとの温度差

昨日は途中で帰ってしまったのを反省して、今日はたっぷりと薬やアイテムを買い込んでから騎士隊の人に頼んで護衛についてもらった。

さっすがプロの武術職!
武器は拾えなかったけど、あたしもティムもちょっとだけ強い技が使えるようになったんじゃない!?

そうだね。あ、アンテルム君だ

ダンジョンから出たところでアンテルムを見かけたので、騎士隊の人にお礼を言って獣道の方を覗いてみることにした。

ゲーナの森に入るアンテルム

アンテルムはあたしたちに気づいていないようで雨に濡れた前髪をかき上げゲーナの森へ。
近くの立て札にはゲーナの森は魔獣の森より難しいダンジョンだって書いてあるけど、ちょっと覗いてみるだけだから!

ティムの腕を引っ張って入り口近くまで連れて行ったものの、深い霧が邪魔をして先には進めない。
ちょっと息を吸っただけで呼吸が苦しくなってきて、急に怖くなってへなへなと座り込んでしまった。

げほっ……アンテルムってば、あんなやばそうな所に入っちゃったけど大丈夫なの!?

この辺りは瘴気が濃いから近づいちゃダメだよ。
ここに入っていいのは王族と武術職の人だけだから

武術職は難易度5のダンジョン全てと役職ごとに難易度7のダンジョンの探索権がある。
あたしのような一般国民は難易度3のダンジョンまでが限界で、ティムたち王族は武術職の護衛をつけるか(どうしてもの場合)自己責任で難易度5のダンジョンに入ってもいいんだとか。

今の僕たちなら深い森の方が合うんじゃないかな。
まずは難易度2のダンジョンのクリアを目指そうよ

え〜!
そんなんじゃいつまでたっても強くなれないし、試合までもう時間がないのに!

無理して難しいダンジョンに入って引き返すよりも、今の強さに合ったダンジョンを確実にクリアする……ティムの言うことも正しいと思うんだけど、試合が刻一刻と迫っていたあたしたちは短期間で強くなる必要があった。
だってティムが次の試合で負けちゃったら陛下に顔向けできないし、あたしも強い武器を拾えないままで正直かなり焦っていたから。

今思えば、ティムとの温度差はこのときすでに感じていたんだと思う。

王家の掟

あたしは雨宿りを兼ねて魔獣の森にティムを引っ張っていくことにした。

ティムがダンジョンに入ると同時に国民の女の子が3人ついてきて、この中の誰かを狙っていそうな男が1人やってくる。
続いてやたらとモテると評判の神職が若い異性を引き連れて、さらに彼ら目当ての異性が続々と集まって……

ダンジョンの入り口はあっという間に独身男女でいっぱいになってしまい、即席の婚活会場のできあがり?

何角関係よこれ! もうドロッドロじゃない!

ここにいる独身女性のうち大半の目的は間違いなくティムで、周りにいるのは彼女たち目当てに群がる独身男性。
同じ王子のアンテルムやアンガスもモテるんだけど、年齢的に結婚まで秒読みのティムが本命って人は本気度が違う感じ。
……と思いきや、婚活は同時進行らしく何人かは別の男の人がお持ち帰り。

まったくもう、愛パーティーじゃないんだから……
こっちは真面目に修行しに来てるのに!

そんなゆるんだ雰囲気に扇動されてか、あたしには1つの名案が浮かんだ。

ティムに(付き合いたい)

あたしとティムが付き合っちゃえばいいんだ!
お互いのプロフィールカード裏に恋人として名前を書いて、仲良く手を繋いで歩いたりしたらすぐに噂は広まって……完璧な作戦かも!

ねえティム、あたしたち、付き合ってることにしない?
あくまでフリだからいつも通りに接してくれていいし、あたしとティムが恋人だって噂が流れたらこれから面倒なこともしなくて済むでしょ?

……それはできないよ。
これは言いにくいことなんだけど……

王家の掟

渋々とはいえずっとトレーニングに付き合ってくれていたティムから返ってきたのはあたしを突き放すような言葉。
王族やめちゃえば、なんて冗談を言っても笑って流してくれたのに、今は明らかな拒絶の意思がうかがえた。

王家には掟があるから、僕とレリアさんは恋人になることも結婚も許されない。
この国の人は皆そのことを知ってるからすぐに気づかれてしまうよ。
もっと早く言っておけばよかったんだけど……

何よ、そんなマジにならなくていいじゃん!
ひどい! ひどすぎるよ!
……あんたなんて大っ嫌い!!

あっ、待って……

ついてこないで! あっち行ってよ!

(ちょっと下心はあったけど)あたしはティムの夢を応援して、女の子たちから守りたかっただけなのに……

涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を見せたくなくて、とにかくティムから離れるように遠くへ走る。
途中たくさんの女の子(話したことはないけどよく見る顔)とすれ違ったけれど、今は振り返っちゃいけないんだから!

あたしの家族

はぁ、陛下に何て謝ろう……
ティムにもフラれちゃったし、あたし、コーチ失格だよ……

あれからあたしは走りに走って、ドルム山を登った先にあるニヴの丘でぼんやりと空を眺めていた。
座れそうな岩に腰かけて一息つくと、どこからか何組もの夫婦が入れ代わり立ち代わりやってくる。
まるであたしなんか見えていないかのように、仲良く手を繋いだり肩を寄せ合ったり腰に手を回したり……鼻先が当たるくらい顔を近づけたり!

(もしかしてここ、デートスポットだったの!?)

傷心のあたしにこの場所は精神衛生上良くない。
帰ろうと腰を上げた瞬間、とどめと言わんばかりに目の前の夫婦の熱〜いキスが視界に入って残りライフは0。

あたしだって知ってたら誰かと一緒に来たかった!
こんな所、二度と来るもんか! フン!!

――ティムに言われたことを思い出すと、鼻の奥がじわじわと痛くなってくる。
山岳兵が作っていたガラス板に映るあたしの顔はひどいもので、泣き腫らした目と乾いた涙の跡は超がつくほどブサイク。
情けない顔を見られないように下を向いて歩いていると、山道から家路を急ぐ親子や夫婦、幼い兄弟とすれ違った。

ちょっと前まではあたしだってこんな生活してたのに……

ジマショルグ長の家

これがあたしの家族。
父さんと母さん、それから兄貴がいるごく普通の家庭だった。
だけど、あたしは本当の両親を知らない。

ジマショルグ長の挨拶

真ん中に立っているのがあたしの父さんだった人。
小さい頃、ジマショルグ長だった父さんの家に引き取られて、母さんはあたしが入学した頃にワクトの神々の元へ。
父さんは実子の兄貴と養子のあたしを男手一つで育ててくれたんだけど、兄貴が成人した年に女を作って再婚を考え始めたらしい。

あたしは血が繋がっていない兄貴のことが好きだったけど、父さんが再婚した日の午後に兄貴も結婚して、逃げるように家を出て行ったんだ。
それからすぐに父さんも死んじゃって、あたしは新しいお母さん(というか赤の他人)と小さな家で二人暮らし。
もう、何もかもが嫌になっちゃった。

――人にはいつか別れが訪れる。
あたしの場合、たまたまそれが早かっただけなんだろう。
とにかく早く家を出たくて深夜こっそりと乗り込んだ船は外国に向かう漁船だったらしく、漁師のおっちゃんに捕まっ……拾われてエルネアにやってきたってわけ。
言葉はそのときに気合いで覚えた。

兄貴のことも最初から諦めるしかなかった。
同じ家で暮らす以上血が繋がっていなくても兄妹は兄妹。
ティムを好きになったのも、きっと初恋の相手に似た人に甘えてみたかっただけなんだ。

と、暗い話はおしまい!
今日はショックなことが多かったけど、いっぱい食べていっぱい寝れば大丈夫!
明日は何食べよう……春ならやっぱりゲゾフライ? それともアヒージョ? 春のビスクもいいな!

そんな感じで考え事をしていたら、噴水通りのど真ん中で誰かにぶつかってしまって慌てて謝る羽目に。

すっ、すみません! 気をつけます!

あら、ごめんなさいね。
……ってちょっと、ひどい顔じゃない!

殿下!? どうしてこんな所に……むぎゅ

街灯の下でぶつかったのはなんとテレーゼ殿下。
殿下はあたしの顔を見るとすぐに抱きしめてくれて、泣きやんだつもりが大きな声で泣いてしまった。

落ち着いた?
じゃあ、温まってから帰りましょう

時刻は夜3刻。
人通りもほとんどなくなって、帰る前に殿下とお風呂に入ることに。

……さっきはどうして泣いていたのか、アタシに教えてくれるかしら

たっ、ただのホームシックで!
本当にたいしたことじゃないので……!

もしかしてティムのこと?

ふわっ! ぶくぶく、ぶくぶく!

あたしがティムにフラれたことは殿下のお耳にまで届いているようで、涙の跡を隠すように顔を洗い流す。
何度かゴシゴシして落ち着いたところで口を開き、全てを打ち明けることにした。

……おっしゃる通りです。
あたし、ティムのことが好きで……追っかけの女の子たちから守ろうと思って、
付き合ってることにしようって言ったら……

でしょうね。
あの子は恋愛や結婚のこととなると、いつも深刻に考えてしまうから

そのときはいい考えだと思ったのに、フラれてからは頭の中が真っ白。
その現場を魔獣の森に詰めかけた大勢の人に見られてしまい、作戦は大失敗に終わったのだった。

これ、ティムがくれたのよ。
安産祈願のお守りでね、肌身離さずつけてるの。
赤ちゃんが無事に生まれたらあの子も自由になるお許しが出るかもしれないんだけど……今も気持ちは変わらない?

はっ、はい!
あたし、あのときはひどいこと言っちゃったけど……本当は今でもティムが大好きなんです!!
優しいしあたしのわがままにも付き合ってくれるし、こんな人と家族になりたかったなって……

あたしは殿下に家族がいないことを話した。
もちろんあたしをここまで育ててくれた養父母のことは大好きだけど、今は1人ぼっちだから。

あの子は繊細だから、普通の人よりずっと人の気持ちに敏感で傷つきやすいの。
あの子が優しいからこそ傷つく人もいる……だから、あなたにははっきり言うことにしたんでしょうね。
王家の掟のこと、黙っていたらもっと傷つけることになるから

ティムがあたしを振ったのはあたしのことが嫌いだったから適当なウソをついたのではなく、本当に結婚できない相手だったから。
ティムは王族であたしは外国人なんだし、仕方なかったといえばそれまでだ。

あたし、フラれてちょっぴり大人になりました!
失恋の1回や2回は人生のスパイスっていいますし、こんなのだいじょ……
わーーーーっ!!

狙ったように足の近くに石鹸が落ちていて、あたしは殿下の前で思い切り尻もちをついてしまった。
大人になったと思った矢先にこのザマで、自分でも先が思いやられるくらい。

殿下って、お母さんみたいです。
あたしを育ててくれた母さんも好きでしたけど、生まれるなら殿下みたいな人のところがよかった……

やだ、お母さんなんて!
アタシまだ大きな子供がいる年じゃないから、お姉さんって呼んでくれた方が嬉しいわ

はい、じゃあお姉さんで!

3人の弟がいる殿下だけど、本当は妹がほしかったとおっしゃってくれた。

それからはまた2人で噴水通りを歩く。
殿下がお住まいのA区の前に差しかかったところで、

よかったらこのまま泊まってく?

あっ、いえ!
そんな、これ以上ご迷惑をおかけするのも申し訳ないので……今日はありがとうございました!

今夜は嵐。
一人暮らしのせいか揺れる窓や激しい雷にびっくりして、大きないむぐるみを抱きしめてベッドで横になった。
……あたしじゃなくて、ぬいぐるみが震えているような気がしたから。

―エルネア城ティムの部屋―

子イムちゃんたちから聞いたよ。
レリアちゃんのことこっぴどく振ったって

王家の掟がある以上、黙っていれば余計に傷つけてしまうだろうから

だったら一度くらい夢見せてやればよかったのに。
独身の間にあの子と楽しい思い出作っときなよ

夢を見せる、か……そうだよね。
ありがとう、アンガス君。おかげで目が覚めたよ

(えっ! オレ褒められてる!?)

――2人の指す意味は違うのだろうけれども。

ティムは以前レリアがしてくれた家族の話を思い出す。
養子の彼女が明るくまっすぐに育ったのは、両親が本当の子供のように愛情を注いでくれたからなのだろう。
ティムはそんな彼女を突き放してからずっと自分を責めていた。
子イムのように純真で朗らかな彼女の笑顔を失って初めて、その存在の大きさに気付かされたのだ。

僕のことを笑わないで全力で向き合ってくれたのはレリアさんが初めてなんだ。
あの子は僕の代わりに笑って、泣いて、出会ったばかりだけど毎日違った表情を見せてくれて……
あの子と出会うまでは明日を迎えるのが怖かったのに、明日もまた会いに来てくれると思ったら気持ちが少し楽になった

レリアちゃんって、子イムみたいで面白いよね。
最近のティム兄、よく笑うようになったけどさ……今は抜け殻みたい

一緒にいるだけで元気をもらってたのかな。
でも、僕がひどいことを言ったから嫌われてしまったみたいで……今度会ったら謝ろうと思うんだけど

むじゃきな子ってウソがつけないから、嫌いって言ったのも本心じゃなかったりして。
レリアちゃんってプルトの子でしょ?
仲直りしたら夜まで待って「明日、遊びに行かない?」って言ってみてよ

夜遅くに? 失礼じゃないかな……

あっちじゃ男と女は夜に会うのが常識。
あの子噴水通りで一人暮らしだし、OKもらえたらそのままいいことあるかも

192年6日、夜4刻。
試合前日の夜はこうして更けていった。


【次回予告】
いよいよ始まった騎兵選抜トーナメント。
アンガスとの戦いで窮地に追いやられたPCレリアだったが、絶対に負けられないと起死回生の行動に出る。そして、試合は一波乱を迎えることに。

次の記事>>>第4話:波乱のトーナメント幕開け

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今までの話を振り返るか?
……アンガスのヤツ、後で説教が必要だな

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次の話はこの下だよ!
アンガスってば試合前に変なことして、絶対許さないんだから~!

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